1.紙の地合ムラとは
2.地合ムラの評価方法
3.透過光法による地合ムラの定量化について
紙(製品)の分析技術には、どのような物質で構成されているかを調査する化学分析技術や、人間の目では見えないミクロな部分を調査する超微細観察技術などに加え、物理的な性質・状態を調査する物性評価技術があります。ここでは、物性評価技術の一つである地合ムラ評価技術についてご紹介します。
1.紙の地合ムラとは?
紙は、水に分散させたパルプ繊維を抄紙機で脱水(ワイヤー上で濾水)、搾水(フェルトを介してプレス)、乾燥(シリンダードライヤーに接触)することで作られる、網目状に堆積結合したパルプ繊維の集合体です。
紙の質量や密度分布の面内不均一性を一般に地合ムラと呼びますが、これは、主にパルプ繊維の分散不良の他、ワイヤーやフェルトなど抄紙工程で使用される各種用具マークも影響します。
地合ムラは、それ自体が紙の強度低下や外観不良の原因になります。また、塗工ムラや印刷ムラの原因となって紙の品質低下を引き起こすこともあります。そのため、地合ムラの評価技術は重要といえます。
地合ムラおよび、地合ムラが要因となる塗工ムラ、印刷ムラの例を示します。
地合ムラ
塗工ムラ
印刷ムラ
地合ムラを透過光で見た例です。光がよく通る部分は白く、通りにくい部分は黒く見えます。
塗工紙の原紙部分に薬品処理により着色して見やすくした塗工ムラの例です。(色が濃い部分は塗布量が少ない)
インキの部分的な転移不良により生じる濃淡ムラの例です。淡い部分にはインキが十分に転移していません。
2.地合ムラの評価方法
地合の評価方法として最も簡便な方法は、紙を日光や照明光に透かして見るいわゆる“透かし地合”の目視評価によるものですが、個人差が出やすい、比較サンプルとの相対評価しかできないなどの問題点があります。これらの問題点を克服して地合を定量評価するために、例えば、可視光やβ線などの透過量の面内分布を、微小スポットで走査してデジタル画像データとして取得し、その画像を解析する方法などが実用化されてきました。
最近では、パソコンの処理能力アップや各種計測機器および画像処理技術の進展もあって、微小スポットで比較的大面積の計測も、高精度、短時間で可能となり、こうした計測システムによる地合評価が一般的に適用されるようになりました。
地合の定量評価の一例として、β線を用いた場合(β線法)と可視光を用いた場合(透過光法)の比較を以下に示します。
1)β線法
β線の減衰量が質量のみに依存するため、質量の変動の定量化には適した方法です。ただし、放射線であるため取扱いが難しく、測定に時間を要するという問題があります。
2)透過光法
β線に比べると計測器の設計に制約が少なくまた取扱いも容易ですし、大面積の評価が可能で、高分解能であるという利点があります。質量変動の他、サンプルの色や厚さなどの影響を受けるという不利な点はありますが、用具マークなどの密度変動の影響を取り込めるという利点や、透過光という共通点から、目視評価との相関が高いという利点もあります。
評価法の比較:実際にPPC用紙の地合をβ線法もしくは透過光法を用いて評価した結果と、目視評価との関係を左に示します。どちらも相関係数が0.9以上であり、目視評価と高い相関がありますが、透過光法の方がより目視評価との相関が高いことがわかります。
3.透過光法による地合ムラの定量化について
評価方法
透かし地合の画像取込装置としてドラムスキャナー(ドラムスキャン型マイクロデンシトメータ)を使用した例を示します。
透明ドラムに貼り付けた紙サンプルを光学レンズで集束させた可視光(ハロゲンランプ)ビームで2次元走査(回転方向、軸方向)し、微小スポットでの透過光量の変動を目視と相関の高い光学濃度
※1
に変換して、デジタル画像データとして取込みます (測定面積〜300mm角、スポットの大きさ0.025〜1mm角)。得られた画像の濃淡(グレースケール256階調)の変動(標準偏差)が大きいほど、地合ムラが劣ることを示します。
※1:物質が光を吸収する程度を表す量で、入射光の強度をI
0
、透過光の強度をIとすると、log
10
(I
0
/I)で表します。
取り込まれたデジタル画像データ
測定画素数
●
1画素0.1mm角で100mm×100mm測定すると、1辺の画素数は、1000個(100mm/0.1mm)となる。この場合のデータ数、1000(縦)×1000(横)=100万画素。
●
左図の全測定データの標準偏差を算出して、地合ムラの大小を評価します。
標準偏差の値が大きいほど地合ムラが大きくなります。
●
左図では画像全体のムラの傾向はわかりますが、各点ごとの濃淡は見えません。
これを右図のように拡大すると、画像は濃淡の差のある点の集合であることがわかります。
評価例(各社PPC用紙)
当社品2種類、国内他社品1種類および海外他社品2種類のPPC用紙(60g/m
2
)の地合ムラを評価した例を示します。
AおよびB(当社品)の地合ムラ(透過光の変動の大きさを表す標準偏差)は、それぞれ0.040および0.041であり、C(国内他社品)の0.047およびD、E(海外他社品)の0.061、0.062と比較して小さいことがわかります。
各社PPC用紙の地合ムラの例
A当社品
標準偏差0.040
B当社品
標準偏差0.041
C国内他社品
標準偏差0.047
D海外他社品
標準偏差0.061
E海外他社品
標準偏差0.062