04.04.01 第28号
塗工紙のインキ浸透性コントロールと
「ドライダウン」の改善
塗工紙のインキ浸透性コントロールと「ドライダウン」の改善
王子製紙ではお客様が常に満足して製品をご使用していただけるために、最高の品質を目指して各種用紙の品質改善に努めています。そのため、印刷時に発生する各種トラブルについてもその発生機構を丹念に究明し、その結果を用紙の本質的な品質改善に繋げていくことは非常に重要なことなのです。
["ドライダウン"とは]
印刷時に発生するトラブルの1つに、"ドライダウン"(正式にはインキドライバック)と呼ばれるものがあります。ドライダウンとは、枚葉オフセット印刷において、インキが乾燥した後(印刷から約24時間後)の印刷濃度が、印刷直後の印刷濃度に比べて減少する印刷トラブルです。ドライダウンが大きい場合には、印刷物の印刷濃度を目標に合せることができなくなることから、極めて重大な問題といえるのです。
このドライダウンは、塗工紙よりも上質紙等の非塗工紙の方が大きく、また塗工紙ではグロス塗工紙よりもマット塗工紙の方が大きいことが知られています。そしてドライダウンの原因としては、インキ成分(顔料やビヒクル)が紙層中、あるいは塗工層中に浸透することによって印刷面の光沢や光散乱が変化するために、印刷濃度が低下する現象と推定されます。(図1参照)
図1:インキ浸透のイメージ
[ドライダウンの発生要因とはなにか]
ドライダウンの発生要因の1つには、インキと紙表面あるいは塗工層表面が大きく関わっています。そこでドライダウンの発生要因解明のため、ドライダウンが比較的大きいとされるマット塗工紙を用いてドライダウンを測定しました。その結果、塗工層の空隙径(1μmにも満たない小さな穴の大きさ)が大きいほど、またインキの初期浸透が遅いほどドライダウンが大きくなる傾向が認められました。塗工紙のインキ浸透性は塗工層の空隙構造(微小な穴の大きさと分布状態)に大きく影響されることから、ドライダウンはインキと塗工層の空隙構造との相互作用によって発生していることが考えられます。
[塗工層の空隙構造とインキ浸透性]
塗工紙の塗工層空隙構造は、塗工層に配合する顔料の大きさを変更することなどで、ある程度のコントロールが技術的に可能です。そこで表1に示すような、大きさの異なる顔料(炭酸カルシウム)を用いて、塗工層空隙構造の異なる3種類のモデル塗工紙を作成し、塗工層空隙構造とインキ浸透性との関係を調べてみました。塗工紙に配合する顔料粒子径を大きくすることにより塗工層の平均空隙径が大きくなり、塗工層の空隙容積は減少します。そして、塗工紙のインキ浸透性については、塗工層の空隙径が大きくなると遅くなり、反対に塗工層空隙径が小さくなると速くなります。(表1参照)
このように、塗工紙のインキ浸透性は、インキと接する塗工層の空隙構造(空隙径や空隙容積)に大きく影響されているのです。そのためこの塗工層空隙構造をコントロールすることにより、塗工紙のインキ浸透性についてもコントロールすることが可能なのです。
表1:モデル塗工紙の配合顔料とその特性
モデル塗工紙
#1
#2
#3
顔料(CaCO
3
)の平均粒子径
μm
0.47
0.63
2.15
塗工層平均空隙径
μm
0.25
0.27
0.77
インキ浸透性
*1
輝度
227
150
32
印刷から2日後のドライダウン
*2
%
6.7
8.2
30.0
*1:印刷から3分後の裏移り汚れを256階調輝度で測定。数値が小さいほどインキセット性は遅い。
*2:印刷直後の印刷濃度に対する2日後の印刷濃度の減少率(%)
[ドライダウンへの塗工層空隙構造の影響]
ドライダウンへの塗工層空隙構造の影響を確認するため、異なる塗工層空隙構造を有するモデル塗工紙に印刷を施して、そのインキ浸透状態を電子顕微鏡にて撮影しました。
塗工層空隙構造の異なるモデル塗工紙のインキ浸透状態
モデル塗工紙 #1
モデル塗工紙 #2
モデル塗工紙 #3
■印刷20秒後
■印刷1時間後
■印刷2日後
(印刷濃度減少率)
6.7%
8.2%
30.0%
この結果、塗工層の空隙径が大きいほど、すなわち粒子径の大きな顔料を使用したものほどドライダウンが大きくなる傾向が認められました。さらに、ドライダウンの小さいモデル塗工紙#1、#2ではインキ皮膜は印刷直後の状態をほぼ保っていますが、粒子径が最も大きな顔料を使用した塗工紙#3では、1時間後には塗工層表面上に明確なインキ皮膜が観察できないほどのインキ浸透が観察されました。
[印刷用塗工紙におけるドライダウンの改善]
印刷用塗工紙のドライダウンの改善については、印刷されたインキが塗工層へ浸透するのを抑制することが必要です。このインキの浸透を抑制するためには、塗工顔料の大きさを小さくする等の方法によって、塗工層空隙構造として空隙径が小さくなるように、また塗工紙のインキ浸透性が速くなるように塗工層を設計すればよいことが基本的に解ります。
しかしながら、光沢が極めて低いマット塗工紙(例:モデル塗工紙#3)のような場合には、配合する塗工顔料の大きさが限られるため、すなわち粒子径の小さな塗工顔料を充分に配合できないために、塗工層空隙構造のコントロールが難しくなります。このような場合には、塗工顔料の他に、塗工層に配合する接着剤や各種助剤等によって塗工層空隙構造やインキ浸透性のコントロールを行うのです。
王子製紙では、このような印刷における各種問題に対して科学的観点から原因を解析し、そこから得られた科学的な理論を基にして用紙の品質改善に取り組んでいます。このような取り組みにより印刷品質を改良する各種技術が研究開発され、日増しに高まるユーザーニーズへの迅速な対応を図っているのです。
(TAPPI Coating and Graphic Arts Conference 2001において発表した内容を再編集して掲載しました。)
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用途別見本帳も新たにラインアップ!さらに充実した見本帳
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塗工紙のインキ浸透性コントロールと「ドライダウン」の改善
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["ドライダウン"とは]
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[ドライダウンの発生要因とはなにか]
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[塗工層の空隙構造とインキ浸透性]
・
[ドライダウンへの塗工層空隙構造の影響]
・
[印刷用塗工紙におけるドライダウンの改善]
【トピックス】
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