| 「OKノンリンクル」誕生までの概要 |
| (1)その開発経緯について |
紙がパルプを原料として生産される以上、オフ輪印刷機でインキが盛られ乾燥される際、水分の蒸発とともに紙は収縮を起こして、いわゆるヒジワが発生 し、印刷仕上がりを大きく阻害します。このヒジワ解消のために、これまでにも製造条件を種々に変更してパルプ繊維の配向性繊維の縦方向への並びを改善したり、紙中水分を低くしたりするなどの対策を講じてきました。しかし、その効果には限界があり根本的な解決に至っておらず、紙がパルプを原料としている限り、ヒジワは出るのは当然で、永遠に解決できない問題だと考えられてきたのです。
そこで当社は持ち前のチャレンジ精神を発揮しました。熱乾燥されても縮まない紙をつくろう!。「OKノンリンクル」は、そんな常識破りの発想から生まれました。この夢のようなアイデアから始まり、不可能を可能にするために、持てる技術ノウハウをすべて結集してヒジワの出ない紙づくりに取り組みました。その永年にわたる努力の成果が、ヒジワをなくして、かつ高級印刷を可能にする「OKノンリンクル」です。それは、まさに21世紀の常識を変えた用紙の誕生と言えましょう。 |
|
| (2)オフ輪じわについて(ヒジワ発生機構とその抑制技術) |
■オフ輪じわとは何か?
オフ輪印刷物に発生するしわの総称、それがオフ輪じわです。一般的に、重い絵柄が両面に印刷された部分で紙の流れ(MD)方向に発生するしわをヒジワと呼んでいます※図1参照。その他に、乾燥後のクーリングロール上で発生するとされるクーリングじわや、製本後に発生するのどじわ 波打ちなどが知られ、その発生度合は絵柄装置や乾燥条件だけでなく、用紙の影響も大きく受け、また用紙が塗工紙か非塗工紙か、塗工紙でもグロスかマットか、さらに用紙の米坪によっても異なります。
|
 |
|
図−1 典型的なオフ輪じわのひとつヒジワ |
|
ヒジワについては、両面をインキ皮膜で覆われた絵柄部(以後、印刷部という)とインキ皮膜のない白紙部では、乾燥過程で用紙水分に差が生じ、その収縮の違いが印刷部と白紙部の用紙寸法差となってヒジワが発生すると報告されています※(山崎岳志・松本実「第49回紙パルプ研究発表会要旨集110」/1982より。)またのどじわ 波打ちについては、乾燥過程で水分が蒸発して用紙が低水分となったまま製本され、その後の時間経過とともに吸湿して用紙が伸びることが原因と考えられています。いずれも、今までは用紙からの対応によってこれを完全になくすことは難しいとされ、もっぱら低温乾燥化や乾燥ゾーンの延長などのインキ、印刷方法や印刷機からの対応がはかられてきました。
表1に、オフ輪じわの現象と原因をまとめています。
|
表1 オフ輪じわの現象別分類
| |
発生場所 |
現象 |
原因 |
ヒジワ |
印刷・
乾燥後に
見られる |
MD方向の波板状のしわであって、両面に濃い絵柄が配置された部分に発生する。比較的低温の乾燥条件で発生するMD方向のはっきりしたしわを「低温ヒジワ」、高温の乾燥条件で発生する全体的にでこぼこしたものを「高温ヒジワ」と分けていうこともある。 |
乾燥過程での印刷部と白紙部の収縮差による用紙寸法差で発生したしわがインキで固定される。 |
クーリング
じわ |
ヒジワと同様両面に濃い絵柄が 配置された部分に発生するMD方向のしわで凹凸が深く、かつその幅が狭い。低温乾燥で発生し易いので「未乾じわ」ともいう。ヒジワより数が少ないが、しわがきついために、印刷物としては重大欠陥となる。 |
ヒジワの変形と
考えられる。 |
のどじわ |
製本後に
見られる |
逆目(横目)無線綴じの本で、白紙の多い絵柄配置の場合に時間経過に従い発生する。印刷条件では高温乾燥したもので発生し易い。 |
製本後の吸湿。 |
波打ち |
順目(縦目)綴じの本で発生し、高温乾燥したもので発生し易い。 |
製本後の吸湿。 |
|
|
|
| |
■ヒジワ発生のメカニズムとは?
オフ輪じわの中でも、ヒジワはほとんどのオフ輪印刷物に見られる現象で、高級印刷物をオフ輪印刷機で仕上げる場合の最大の障害となっています。ここではその発生機構について、用紙の観点から調査しました。
|
| [1]- |
加熱時の用紙収縮挙動
白紙部と印刷部をそれぞれ個別に熱機械分析装置(TMA)によって測定した加熱時の紙表面極近傍温度と紙の幅(CD)方向収縮率の関係を示したのが図2です。A2塗工紙(米坪84.9g/m2)の場合、白紙部は加熱開始より大きく収縮し始めるのに対して、両面をインキ皮膜で覆われた印刷部はかなり遅れて収縮し始めています。1982年の報告のように、乾燥過程において白紙部と印刷部で用紙の寸法に差が出ることが確認できました。
実際に、白紙部も印刷部も1枚のシート上にあります。ですから、図2のように、それぞれが勝手に収縮することはありません。すなわち乾燥過程での、ある時点を想定しますと、白紙部は加熱によって収縮を始めるのに、印刷部がほとんど収縮しないので収縮できないという状態が考えられます。そのような状態で印刷部は白紙部から大きな収縮力を受けることになります。
|
 |
|
| [2]- |
ヒジワ発生のモデル
ヒジワ発生のメカニズムを、図3の模式図で示します。印刷後の乾燥過程において、まず白紙部は乾燥初期から水分の低下により収縮を始めます。一方、印刷部はインキ皮膜によって水分の蒸発は妨げられるので、すぐに収縮が起こりません※図3−a参照。その結果、印刷部から離れた白紙部は水分の低下に伴い収縮することができますが、印刷部に近い白紙部は印刷部の影響を受けて収縮できない状態となります。このため、収縮できない白紙部が収縮力を発現し、これが印刷部を圧縮する力として作用します(※図3−b参照)。*圧縮力が大きくなって印刷部が耐えきれなくなると、ついに印刷部が座屈して、波板のようなしわが生じます(※図3−c参照)。このしわがインキ皮膜で固定される現象を、ヒジワと呼んでいます。
*印刷部に作用する圧縮力は、白紙部からの収縮力だけでなく、これに印刷時のテンションによる紙の幅方向圧縮力(ポワソン応力)が加わったものとなります。
|
 |
|
| |
■ヒジワ抑制の技術とは?
ヒジワは、乾燥過程で生じる白紙部と印刷部のCD方向の収縮差に起因する印刷部の座屈現象です。そこで、その抑制には次の2つの方法が考えられます。
(1) 乾燥過程で生じる白紙部と印刷部の収縮差をなくす。
(2) 圧縮力が生じても印刷部が座屈しない強固な腰の強い用紙とする。
高米坪の用紙ほどヒジワが発生しにくくなるのは、(2)の理由によります。 |