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00.01.01 第11号
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「紙と印刷」について |
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紙と印刷は、切っても切れない縁で結ばれているとよく言われます。紙の使われ方はさまざまですが、新聞、チラシ、書籍、雑誌、カタログ、ポスターなど、いわゆる情報媒体として使われることが多いからでしょう。紙に情報を与えるというのは、すなわち紙に印刷をすること。もちろん他にも、包装紙のようにモノを包んだり、箱など運搬や保管用に使われたり、さらには家庭用紙のようにモノを拭いたり、衛生紙として使われたり…と、さまざまな用途がありますが、とりわけ洋紙に限ればそのほとんどが印刷用途です。そんな密接な関係にある紙と印刷について、ここでは主な印刷方式とそれぞれに求められる用紙の品質をまとめてみました。 |
| 印刷方式 |
印刷とは版を使ってインキを物体(ここでは紙)に転移させることで、文字や絵、写真などを表現する方法です。版のタイプによっていくつかの種類に分けられますが、最も一般的に用いられている3つの印刷方式をご紹介します。その3つとは、平版印刷、凸版印刷、凹版印刷で、日本の3大印刷方式と言えるでしょう。特にオフセット印刷は大量印刷が可能で、かつ多色印刷に向いています。同じく大量カラー印刷が得意なグラビア印刷などに比べても版の製作費が安く、短期間で作成できるというメリットがあるので、需要も伸びています。
下の表のように、その他の印刷方式にもそれぞれメリットがあり、しっかりと棲み分けができているわけです。 |
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版形状 |
印刷方式 |
国内シェア(※) |
特徴 |
平版 |
オフセット印刷 |
シェア約72% |
多色刷り、高速印刷が得意。ビジュアル化、カラー化の流れで需要が伸びている。チラシや雑誌のカラーページ、カタログなどが多い。 |
凸版 |
凸版印刷 |
約18% |
文字印刷に適している。雑誌本文や、書籍印刷などに用いられる。 |
凹版 |
グラビア印刷 |
約6% |
インキの盛り量が多く、色調が豊富なためカラー写真の再現性が抜群。雑誌のカラーページや、カタログなどが多い。 |
| その他 |
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約4% |
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※ 1997年通産省統計より算出 |
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| 印刷用紙の品質 |
| 印刷用紙は本やカタログ、ポスター、チラシなどのデザインに適した質感(色、つや、平滑性、手触り感など)を備えたうえで、印刷に必要とされる性質を満たしていなければなりません。下の表に各印刷方式の特徴とこれに必要とされる紙の品質をまとめています。この他にも紙がカールしたり、波を打ったり、シワなどが入っていないことなどは、印刷方式に関係なく用紙に求められる必要条件です。 |
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印刷方式 |
紙の品質に関する特徴 |
紙に要求される品質 |
オフセット印刷 |
紙が水に濡れる。 |
水をほどよく吸い、水に濡れた後も表面の強さを失わない。 |
| インキが粘っこい。 |
粘りに負けない表面強度。 |
熱風で乾燥される。
(巻取輪転の場合) |
膨張する紙中の水蒸気を外へ逃がす通気性。 |
グラビア印刷 |
版の穴(凹)に入っている
インキを紙へ転移させる。 |
転写をたすける平滑性と弾力性。 |
1色刷られる毎に熱風乾燥される。 |
温度(湿度)変化に負けない寸法安定性。 |
凸版印刷 |
(比較的要求度は少ない) |
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まずオフセット印刷について、他の印刷方式と大きく違う点は紙が水に濡れるということです。紙に付着した水は次の版でインキの転移を邪魔してしまうので、速やかに紙の中に吸収されることが望ましくなります。さらにオフセット印刷のインキは粘りが強く、ブランケットが紙から離れる時、紙の表面を剥ぎ取ろうとする力が強く、これに対抗するだけの紙力(表面強度)が必要となります。インキが紙を剥ぎ取ろうとする力は、印刷スピードが速いほど強くなります。例えば、オフセット輪転印刷機のスピードはこれまで500〜800rpmが主流でしたが、最近では1,000rpmを超える印刷機が登場。今後も紙に要求される強度はますます重要になるでしょう。
巻取印刷の場合は、印刷直後に熱風乾燥されます。このため紙の中の水分が急激に膨張(蒸発)して、紙層を破壊するブリスター(火ぶくれ)と呼ばれるトラブルが発生します。そこで巻取オフセット印刷の場合は、水蒸気を紙の外へ逃がす通気性が必要となります。これら吸水性、表面強度、通気性などをうまくバランスさせながら、質感を表現するのが紙をつくる現場の腕の見せどころなのです。
次にグラビア印刷ですが、グラビアの場合、何といっても版の凹部に入っているインキを紙に転移させるので、穴と紙がピッタリと密着しなければ上手にインキが紙へ移りません。そのためには、まず紙が平滑でなければならず、同時に紙層にある程度の弾力が必要となってきます。紙を平滑にするいちばん簡単な方法は、カレンダーと呼ばれる金属のロールで紙を押しつぶす工程で、高い圧力で紙をゴリゴリと押しつぶしていけばよいのですが、つぶせばつぶすほど紙の弾力がなくなり、やり過ぎると逆効果になりかねません。平滑性と弾力性のバランスを見ながら、つぶし方を加減したり、弾力性のある材料を選択したりと、これも紙をつくる現場の腕の見せどころといえるでしょう。
凸版印刷は、画線部だけが高い印圧で紙に押し当てられるのでインキが転移しやすく、また文字印刷などの単色印刷に用いられるのが多いこともあって、他の印刷方式に比べてそれほど紙に特別な品質は要求されません。逆にいえば、用紙を選ばないことがそのメリットでもあるわけです。 |
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| 紙の平滑性と印刷効果について |
| ■インキの転移率 |
紙の平滑性は、印刷効果にさまざまな形で影響を及ぼしますが、なかでも最も重要なのはインキの転移の状況と関連した項目です。
版あるいはブランケットの上に盛られたインキは、図1のように印圧によって紙面に押しつけられた瞬間に、紙と接触している部分のインキの中からワニスの一部が紙の中へ入り込み、この部分の顔料の比率が多くなって粘りが上昇します。これに次いで版やブランケットが紙から離れる時、やわらかな状態で残っているインキ部分のほぼ中ほどでインキの分裂が起こって、紙への転移が行われることになります。従って、インキの転移を左右する第一の要因はインキと紙が十分な接触をすることであり、この点で紙の平滑性は極めて重要な役目を果たすことになるのです。すなわち、紙の表面が平滑である場合と粗面である場合とでは、インキ膜との接触の度合いに差があるため、インキの転移状況に大きな違いが発生します※図2のA参照。
実際に粗面の紙への印刷物を拡大してみると、ところどころの凹部にはインキがまったく付着していない状況が観察されます。特にベタ刷り印刷の場合などには、いわゆるツブレ不良の現象となって印刷効果は著しく低下してしまいます。図2のBのように、版へのインキ盛りを増やしてやれば紙面の凹部へもインキが入り込んで、やっと全面がインキで覆われることになります。
はじめに版へ盛られたインキの量と、実際に紙面に移ったインキ量との比率のことを転移率と呼んでいますが、凸版印刷で版から直に紙にインキが移される場合の転移率の状況を見てみると、図3のようになります。
アート紙のように平滑な紙は、版への盛りが少なくても、よくインキと接触するために図でも分かるように、インキ盛りが少ない所で転移率は急激に上昇して、少量のインキで全面の被覆が行われます。これ以上にインキの盛りを増やしても、転移率はかえって減っていきます(転移するインキ量が減るのではなく、版へインキを盛っていく割合には転移する量が増えていかないという意味です)。これは印圧の瞬間に紙面へ押し込まれるワニスの量には限度があり、紙面で粘度上昇するインキの量に限度が生じるためです。これに対して、粗面の紙ではインキ盛りが少ない場合は接触が不十分なため、インキ転移率はずっと低い数値を示しますが、インキの盛りを増やしていくと段々に凹んだ部分へもインキが付着するようになって転移率が上昇していくことが分かります。アート紙の場合より何倍ものインキ盛りで、どうにか十分な転移が得られるようになるわけです。
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| ■インキの転移率の増加 |
紙の平滑性との関連では、インキの盛りを多くしてやるのがインキ転移率の増加をもたらす方策であることをこれまでお話してきましたが、この他にも転移を増やす手段は以下の通り、いくつかあります。
(1) 印圧を増やすことによって、インキが紙面へ押しつけられる度合いを増やしてやる。
(2) インキをやわらかくすることで、インキが容易に紙の凹部へ流れ込むようにしてやる。
(3) 印刷速度を落とすことによって、紙面とインキが十分な接触をするような時間を与えてやる。
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このようにいろいろな方法が考えられます。ただし、単に転移率を増やす意味においてはこれらのいずれもが有効な方策であるとしても、印刷物の品質水準からすると、これらはどれもマイナスの作用をもたらすことが容易に認識できるはずです。こうした観点からも、やはり紙のメーカーにできる限り平滑な紙をつくってもらうことが最上の方策であると言えるでしょう。
紙の平滑性はインキ光沢の面でも大きな影響を及ぼすうえに、これに伴ってインキの発色性などにも関係していきます。いずれの場合にも、平滑な紙であるほど優れた効果が得られることはすべて一致しています。 |
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| 紙の白さについて |
| ■白さのとらえ方とは… |
紙の白さを分光光度計という器具で測ってみると、図1のような反射率曲線が得られます。白さとは、試料にあたる白色光の中のさまざまな色分光が元通りに均一に、完全な反射を示すことによって得られるので、この曲線が上にいくほど、より白いことを示しています。Aは、測定のための標準に使う酸化マグネシウムという白色粉末の反射率です。これと比較するとアート紙の白さは、Bのような反射で示されます。そしてノンコートの上質紙になると、Cのようになります。それぞれ紙面が各種の色光を少しずつ不均一に吸収していることを示しています。
紙の白さを比べるため、ブリキ板に白インキを印刷したとしましょう。図2のAがその色で、白というよりはグレーです。3回ほど重ね刷りをしてやると、いくらかマシになってBになります。コーティングホワイトという塗料を厚く塗るとCのようになって、ずっと白くなりますが、アート紙の白さにはまだ及びません。従って白さを表現する簡単な手段としては、ある波長(例えば457ミリミクロン)における反射率の数字を以て比較するやり方があります。しかし、蛍光染料などが使われているとニュートラルな白さではなく、いくぶん青みがかった白さになります。ブリキの白インキやホワイトコーティングでは、わざわざ赤みや青みの色素を添加して少し色をつけ、人間の眼の感覚的な白さを強めるようにしています。
図3の3種の白さはA(ニュートラルな白さ)、B(赤みの白)、C(青みの白)ですが、多くの人にこれらの試料を見せてどれがいちばん白く感じるかを調べると、キレイに3つに分かれてしまいます。つまり図3のような場合、ある波長での反射率ではどれが白いかを比較できないことになります。従って、精密な白色度の計算では赤みや青みなどの色合いの差も加味した三次元的な空間の隔たりで白さを表現、比較するやり方が採用されています。このようにひと口に白さと言っても複雑な要素が絡み合って、なかなか奥が深いものなのです。
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| ■印刷効果は… |
一般的に、印刷インキは重ね刷りによる発色効果を得るため、できるだけ透明になるようにつくられています。従って、印刷物のインキ膜を透過する間に、色素によって選択的な吸収を受けた後の色光は図4のように、紙の面で反射されて私たちの眼に入ってくるのです。この時、前述した紙質の差による若干量の色光吸収が紙の面でも行われるために同じインキを同条件で印刷しても、紙の違いで色はかなり違ってくることになります。
異なる紙上でのインキの発色の違いも、分光反射率曲線を測ってみると正確にとらえることができますが、数字に変えて比較するためには色相・明度・彩度という3つの性質に計算し直したり、濃度計を使って色相誤差・濁り・効率という3つの値を計算したりすることが普通です。図5はその一例で、カラーサークルと呼ばれているものです。線で結んだ面積が、外側に広くなっているものほど演色性が優れていることを意味しているので、2種の紙の演色性における優劣などが簡単に比較できます。また、同じような演色性でも、色の出方に差がある場合には効率という計算値が判断として役立ちます。
眼で見た紙の白色感と実際に印刷した際の演色性とでは、必ずしも比例しない場合も多いので、このようにさまざまな角度からの検討が必要となってくるわけです。また、文字印刷の場合には白地と印刷部分とのコントラストからくる可読性なども大切な条件の一つとなりますし、紙の吸油性や平滑性などの要素が加わると、さらに印刷効果との関係が複雑化して多くの問題をもたらすことになります。
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