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98.12.01 第9号

「ダブル塗工紙」のご紹介
当社ではつねにお客さまにご満足いただけるよう、各品種・グレードにおいて最高の品質を目指して品質の改善に努めています。とりわけ高級カタログ、カレンダーなどに使用されるA0、A1、A2コートについては最高の印刷効果が求められており、そのニーズに応えるために保有するダブル塗工設備(ブレード+ブレード)を活用し、1996〜97年にかけて従来の品質をいちだんと向上させたA0(SA金藤N他)、A1(OK金藤N他)、 A2(OKトップコートN、OKトップコートS)コートを開発。さらにA2マットについても、ダブル塗工による面質のアップとより嵩高な要望を取り入れた「OKトップコートマット」が1997年に登場しています。
そこで今回は、当社の“ダブル塗工”を施した塗工紙の特徴についてご説明しましょ。

“ブレードコーター”とは…
原紙マシンで抄造されたパルプ繊維を主体とする原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする水性塗料を塗工する方法として、各種のコーターが使用されます。コーターは、1850年代に開発されたブラシコーターに始まり、1930年代にはロールコーターやエアナイフコーターが導入されました。“ブレードコーター”は1956年にアメリカで実用化されたのが最初で、その後に数々の改良が加えられて現在、印刷用塗工紙の主要なコーターとなっています。
ブレードコーターは、原紙上に過剰に塗布された塗料を厚さ0.5mm程度の鋼製の刃(ブレード)で掻き落としながら、表面を均一にする塗工方法です。 ※図1参照
従って、得られる塗工面は原紙の凸凹に関係なく、非常に平滑性が高いのが特徴です。逆にロールコーターやエアナイフコーターでは、原紙の凸凹に沿った塗工面が形成されます。
ブレードによる塗工の模式図
〈図1:ブレードによる塗工の模式図〉
 
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シングル塗工には限界がある?
ブレードコーターでは原紙の凸凹に関係なく、平滑性の高い塗工面を形成することはすでに述べましたが、塗工面の平滑性が高いのはあくまでもブレードを通過した直後の状況です。
ブレード通過直後の塗料はまだ流動性があり、その後の乾燥過程で徐々に水分を失い固化します。問題は、この乾燥過程で塗工面の平滑性が低下することです。原紙上の塗料に流動性がある間に、原紙表面の穴から原紙内部に浸透する、あるいはパルプ繊維が塗料に含まれる水分を吸収して伸び、その後乾燥して収縮するなどにより、塗工面に凸凹が生じて、ブレードコーターで得た高い平滑性が低下してしまうわけです。 ※図2参照
もちろん、まったく塗工されていない原紙表面に比べれば遥かに高い平滑性がありますが、ある程度の凸凹は残ります。この凸凹は塗工量が多いほど、または塗工量が同じでも塗料の固化が早いほど軽減されます。しかし、塗料を一度塗るだけのシングル塗工では完全になくすことができず、塗料の配合調整で対応するにしても他の品質との兼ね合いがあり、あまり自由が効きません。
 
〈図2:乾燥過程での平滑性低下の模式図〉
乾燥過程での平滑性低下の模式図
さらにもう一つの問題として、塗工量のムラに起因する“インキ着肉ムラ”が生じやすいということがあります(後述のダブル塗工との比較として)。図2(ブレード塗工直後)に示すように、ブレードコーターでは原紙の凹部は塗工量が多くなり、逆に原紙の凸部は塗工量が少なくなっています。この結果、塗工量ムラに応じたバインター量のムラが塗工層表面に生じます。このムラが強いと、オフセット印刷での湿し水の吸水性やインキセット性が均一でなくなり、インキ転移ムラの原因になることがあります。
 
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“ダブル塗工”とは?
ブレードコーターの特徴は先にお話しましたが、乾燥過程での平滑性低下を防ぐためには、塗料が原紙内に浸透しないようにすること、またはパルプ繊維ができるだけ水を吸収しないようにすることが重要です。これを可能とする技術が“ダブル塗工”で、その名の通りに塗料を2回塗工します。最初に塗る塗工層(下塗り層)で原紙表面の穴や凹みを埋めて平滑な面とし、この上に2度目の塗工層(上塗り層)を設けるものです。
塗工紙の平滑性は、原紙の凸凹が影響する比較的大きなマクロラフネスと、塗工した顔料の大きさが影響する小さなミクロラフネスの2つに分けられます。  
※図3参照
 
〈図3:マクロラフネスとミクロラフネスの模擬図〉
マクロラフネスとミクロラフネスの模擬図
ダブル塗工では下塗り層の顔料として原紙の凸凹を効果的に埋められるように、比較的大きな顔料が使用され、マクロラフネスの改善が図られます。また下塗り層を設けることで、上塗り塗料の浸透と原紙への水の吸収を抑制することができます。さらに下塗り層で原紙凸凹の影響を軽減することで、上塗り層では光沢、白色度や印刷適性といった他の品質をより追求しやすくなりました。この結果、ダブル塗工が高い光沢が要求されるグロス系塗工紙だけでなく、しっとり感が求められるダル・マット系塗工紙でも品質改善のための有効な手段となっています。図4ではダブル塗工した塗工紙の断面写真を、図5には表面写真を示しています。
原紙に顔料塗工層を2層設けることは、かなり以前から行われています。1960年代をはじめとして、当社のトップコート(OKトップコートNの前身)でロールコーター+ロッドコーターによるダブル塗工を実施してきましたが、これは同じダブル塗工でもブレードコーター+ブレードコーターによるダブル塗工とは品質が大きく異なるものです。
下塗りも、上塗りもブレードコーターで塗工しているのが当社のA2グレード以上のアート紙とコート紙の特徴で、最も高い平滑性を持つ塗工紙が得られます。
 
〈図4:ダブル塗工した塗工紙の断面写真〉
ダブル塗工した塗工紙の断面写真
 
〈図5:シングル塗工とダブル塗工の表面写真〉
シングル塗工とダブル塗工の表面写真
 
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印刷適性に対するダブル塗工の効果とは?
次に、塗工紙に求められる印刷適性の中でも最も重要な印刷光沢とインキセットに対するダブル塗工の効果についてご説明します。

(1)“印刷光沢”については…
印刷仕上がりに大きな影響を与えるため、グロス系やダル系塗工紙では印刷光沢の高いものが望まれています。これら塗工紙において濃い図柄が印刷された部分では、塗工した顔料の大きさが影響するミクロラフネスはインキで埋められており、ダブル塗工ではシングル塗工を対比改善されたマクロラフネスの差がそのまま高い印刷光沢や良好な印刷平滑性となって現れます。  ※図6参照
〈図6:シングル塗工とダブル塗工の印刷面平滑性の模式図〉
シングル塗工とダブル塗工の印刷面平滑性の模式図
また図6からも明らかなように、印刷適性を支配する上塗り層の塗工量ムラがシングル塗工と比べて軽減されるので、塗工量のムラが原因となるインキ着肉ムラも改善されます。
(2)“インキセット”については…
一方、印刷光沢と並んでもう一つの重要な印刷適性であるインキセットは、インキ顔料の粒子径より小さい塗工層の細孔がインキ中の低粘度溶剤成分を選択的に吸収することで進行する現象です。  ※図7参照
〈図7:シングル塗工とダブル塗工のインキセット性の模式図〉
シングル塗工とダブル塗工のインキセット性の模式図
塗工紙のインキセットレベルは、インキと接する塗工層の細孔構造(細孔径や細孔容積)に大きく影響され、これらをコントロールすることでインキセットを早くも遅くもできますが、あまりインキセットを早くすると印刷光沢が低下することが経験的に知られています。従って、印刷光沢とインキセットをどこでバランスさせるかは、塗工紙の品質設計上のポイントであり、ダブル塗工はシングル塗工に比べて高い印刷光沢を得やすい分、有利となります。
インキセットと印刷光沢は相反する品質でありますが、ダブル塗工では下塗り層によってマクロラフネスが改善されているため、同じ塗料を塗工してもシングル塗工と比べて高い印刷光沢を得やすく、インキセットを変えずに印刷光沢を向上することが可能です。同時に、上塗り層の細孔構造をコントロールすることで、高い印刷光沢を保ったまま、シングル塗工では到達できなかった速いインキセットを実現できるようになります。つまり、ダブル塗工はシングル塗工に比べて、インキセットと印刷光沢をより高い位置でバランスさせる画期的な方法といえるでしょう。
ユーザーニーズ自体のクオリティの向上が日増しに高まるにつれて、当社の技術もその高度化が要求されます。そこで単なるハードウエアのレベルアップだけにとどまらず、今やソフト面をも視野に入れながらの研究開発が不可欠なテーマとなっています。そうした意味からもダブル塗工はそのスタートであり、“技術の王子”の本領が存分に発揮されています。
 
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目次

  1. “ブレードコーター”とは…


  2. シングル塗工には限界がある?


  3. “ダブル塗工”とは?


  4. 印刷適性に対するダブル塗工の効果とは?


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